寒い季節がもっと楽しくなる！定番料理『鍋』について大解説！

寒くなると食べたくなる料理と言えば？

…そう『鍋』ですね！
寒い日には鍋料理を食べて身も心も温めたくなります。

そんな鍋料理には様々な種類があり、地域に根差した鍋文化が形成されています。
今回はそんな鍋についてご紹介して行きたいと思います。

鍋のルーツ

鍋の歴史は非常に古く、日本においては縄文時代～弥生時代のころから煮炊きを目的とした土器が存在していたとされています。
また、大きな貝殻を鍋のように使用することもあったようです。（「貝焼き」とも）

しかし、これらで作られる料理は主に汁物や煮物であり、いわゆる現在の『鍋』とは異なる料理であったと言われています。

火にかけたままの鍋を囲んで食べるようになるのは江戸時代の後期～明治頃だと言われており、長崎を発祥とする宴会料理「卓袱（しっぽく）料理」の登場などにより徐々に一般的なスタイルとして定着したと考えられています。

ちなみに「鍋」の語源は、元々肴（さかな）を煮る瓶のような土器を指す「肴瓮（なへ）」という言葉が濁音化したものなのだそう。
始めに「堝」という文字が当てられ、のちに鉄製のものが流通するようになると金偏の「鍋」が使用されるようになったのだとか。

日本の鍋文化とその変遷

囲炉裏にかける大鍋に対して、食卓に持ちだす鍋を「小鍋立て」といいます。
「小鍋立て」は現代の鍋のいわば原型であり、食卓へと運び出した鍋を1人～複数人で囲んで食べるスタイル。
当時は、「江戸の食い倒れ」という言葉が生まれるほどで、庶民が食を楽しめるようになった時代でもありました。

そして、塩や味噌が主体だった調味料にしょうゆやみりんが加わり、鍋はもとより、日本料理そのものが確立し、その発展に大きな拍車をかけることとなります。
「煮込みながら食べる」鍋料理店も登場し、「どじょう鍋」や「あんこう鍋」、「田楽鍋」「湯豆腐店」といった専門店が数多く見られるようになります。

そして時代が明治へと差し掛かると鎖国が終わり、富国強兵策がとられるようになります。
それまで禁止されてきた肉食が奨励されると「牛鍋」が登場、一躍ブームとなり文明開化を象徴する食文化として広く普及するようになりました。

牛鍋は現代でいう「すき焼き」で、牛肉・ネギ・豆腐などを、醤油と酒などを合わせた割下で煮て食べる料理
「座敷やテーブルに置かれた鍋を複数で囲んで食べる」という、現在のスタイルが確立したのもこの「牛鍋」の登場がきっかけだと言われています。

近代の鍋

明治以降も鍋は日本の食文化として愛され続けており、現代では味付けや食材などにより100種類を超える鍋料理があると言われています。
地域の特色を活かした鍋料理は特に人気で、日本各地にその地域自慢の鍋料理がある為、本場の「ご当地鍋」を目的に旅行をする人もいるのだとか。

そんなご当地鍋を一部ですがご紹介してみたいと思います。

ご当地鍋

水炊き（福岡県）

味付けされていない水又はお湯に具材を入れて作る鍋料理。
特に博多名物とされるものを「博多水炊き」と呼称することも。
鶏肉を骨ごと使用し、旬の野菜を加えて煮込むことで素材の旨味が溶け出した美味しいスープに仕上がります。

ふぐちり（大分県）

ちり鍋の「ちり」という語源は、新鮮な魚の切り身を鍋に入れた時チリチリと縮む姿が由来と言われており、白身魚の切り身を豆腐や野菜などと一緒に水煮にした鍋料理のことを指しています。
骨付きの身はプリプリとした食感が特徴で、締めは雑炊にして出汁を最後まで味わいます。
「ふぐちり」は別名「てっちり」とも呼ばれ、当たると死んでしまうふぐの毒にちなんで、ふぐを鉄砲と読んでいたことに由来すると言われています。

あんこう鍋（茨城県）

深海魚であり外見が奇妙であるが「食べられない所がない」と言われるアンコウを用いた鍋料理。
「アラ」からとれる出汁とアンコウの肝が溶け出したスープの濃厚な味わいが特徴。
味付けは味噌や醬油ベース、塩ベースなど地域により異なり、水を使わず食材の水分のみで調理する方法もあるのだとか。

牡丹鍋（兵庫県）

猪肉と季節の野菜を味噌で煮込んだ鍋料理。
つかまえた猪の肉をみそ汁にして食べ、さらにアレンジしたものが牡丹鍋の起源になったと言われています。
なお「牡丹鍋」という名前は、猪肉を並べる際に、牡丹の花のように見えるところからつけられたとされています。

石狩鍋（北海道）

サケが有名な石狩川の河口にある、石狩町の漁師料理から生まれた鍋料理とされる。
昆布出汁で、サケの切り身やアラと共にキャベツ・大根・玉ネギといった野菜を煮込み、味噌で味を調える。
最後は山椒加えて仕上げるのが本場の石狩鍋なのだそう。
かつてサケの地引き網漁を見るために集まった観光客へ「石狩鍋」を振る舞ったところ、美味しいと評判になり、認知が広まったと言われています。

きりたんぽ鍋（秋田県）

ご飯をお餅状につぶし、串に巻き付け焼いたものを「たんぽ餅」といい、「たんぽ餅」を串から外して食べやすい大きさに切ったものを「きりたんぽ」と呼びます。
串に巻き付けられたご飯の様子が「ガマの穂」に似ていたことから、短い穂を意味する「短穂(たんぽ)」という名前がついたそう。
鶏ガラのスープに鶏肉、野菜、きりたんぽを入れて煮込むため、一つの鍋でご飯と野菜とお肉が摂れて非常に健康にも良いとされています。
また、本場のきりたんぽ鍋は秋田県のブランド鶏「比内地鶏」を使用するのが一般的なのだそうです。

その他の鍋料理

しゃぶしゃぶ

薄切りのお肉を、煮立った湯（又はスープに）にくぐらせて火を通し、タレや薬味を付けて食べる鍋料理。
お肉を海鮮に変えてみたり、旬の野菜を加えたり、タレや薬味を好みでアレンジできるなど、バリエーション豊富な点が人気の鍋料理です。
起源には諸説あり、一説によると中国から伝わった「涮羊肉（シュワンヤンロウ）」という料理が原型であるとされています。
※シュワンは「すすぐ」、ヤンロウは「羊肉」という意味。羊肉を薄くスライスし、熱いスープにくぐらせて食べる北京の鍋料理。
またその名称は、料理店で「従業員がおしぼりを桶で洗う様子」から着想を得て名づけられたと言います。

すき焼き

薄切りの牛肉と春菊や豆腐といった具材を、醤油・酒・砂糖を合わせた割り下で煮込み、溶いた生卵をくぐらせて食べる鍋料理。
関東と関西ですき焼き文化には違いが見られ、関東では割り下から鍋にいれ、お肉や野菜、といった具材を一緒に煮込んで仕上げるのが一般的です。
対して関西では、まずお肉を焼いてから割り下を加え、煮立ったらその他の具材を加えて仕上げます。
また、具材として「お麩」を加えるのも関西風すき焼きの特徴だと言えます。
関東では元々「牛鍋」としてその名が広まっていましたが、関東大震災を機に牛鍋店が激減したことで次第に「すき焼き」が一般化したのだそうです。
名称の由来には諸説あり、一説では農具の鋤（すき）を鉄板代わりに魚や貝を焼いた料理を「魚すき」「沖すき」などと呼んでいたことから、鋤で牛肉を焼いたものを「すき焼き」と呼ぶようになったのだと言われています。

チゲ（韓国）

チゲとは、韓国語で鍋を意味する言葉。
そのため「チゲ鍋」と言ってしまうと、本来の意味としては重複した言葉になってしまので注意が必要です。
コチュジャンや唐辛子などを用いた辛い味付けのものが一般的で、キムチチゲ（キムチの鍋）やスンドゥブチゲ（柔らかい豆腐の鍋）などが有名。

火鍋（中国）

発祥である中国を中心に、広くアジアで親しまれている鍋料理。
中国語で「火にかけて煮込みながら食べる鍋料理」という意味を持っているそうです。
日本では鍋の中央が仕切られた特徴的な鍋で調理するのが一般的。
この二つに仕切られた鍋は、一説によると辛いスープと辛くないスープを同時に味わうことを「陰陽」に見立てて考案されたといわれています。
使用されるスープは「白湯（パイタン）」と呼ばれる白いスープと、赤唐辛子や豆板醤などで味付けされた「麻辣（マーラー）」という赤いスープが基本形。
他にも様々なスープがあり、食材や薬味、タレなど、好みに合わせて非常に多彩な楽しみ方が可能です。

まとめ

日本のみならず様々な国や地域で愛される『鍋』。

今回ご紹介したのはごく一部にすぎません。
定番の「寄せ鍋」や「キムチ鍋」「もつ鍋」、変わり種ですと「コラーゲン鍋」や「メレンゲ鍋」、他にも洋風、中華風、エスニック風などなど…
シンプルだからこそ奥が深く、非常に様々な楽しみ方があるのが『鍋』の大きな魅力の一つと言えるでしょう。
好みの食材で、あなただけのオリジナル鍋を作ってみるのも良いかもしれませんね！